戦争と衣服
第二次世界大戦は多くの人々の運命を左右しました。
そして、混沌とした街中を歩くクリスチャン・ディオールの運命も翻弄され、また戦争の中で、自分のあり方について大きな心の葛藤が生まれます。
戦争では全ての人が戦禍に怯え苦しみ、限られた物資の中でぎりぎり生活をし、享楽に浸る余裕もなく日々を凌ぎました。
そのような生活パターンは、女性のファッションを急激に変化させます。
優雅なロングスカートを履く女性はどこにも見当たりません。
布の配給量が限られていたので、自ずと女性たちの服装も簡素になっていったのです。
そして、そのほうが結果的に合理的だと気付けば、それまで暑苦しいドレスを着て窮屈な思いをしていた女性たちは、二度とドレスもコルセットも身に付けたくなくなるのは当然のことでしょう。
戦争は、女性たちの衣服への価値観を変えるきっかけになったのです。
そして、衣服を生み出すディオールも、自分が何を作ればいいのか、考え直す時期に来ました。
彼はお金持ちの出身ですから、本物の贅沢を知っています。
また、多くの芸術家仲間に囲まれながら、自らの芸術に対する感性を磨いてきたので、譲れない美学もあります。
彼は女性の服をデザインするとき、合理性・機能性よりも理想的な美しさを求めてきました。
そして、これから先、本当にそのままでいいのか、じっくり考えなくてはなりませんでした。
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