悩める進路
クリスチャン・ディオールは両親の意向をくみ、政治専門学校に入学しましたが、将来を丸っきり諦めて両親の言いなりになるつもりはありませんでした。
ディオールの性格は非常に温厚で内向的で、人と言い争いができない性質なのです。
ですから、その場を丸く収めただけで、その後は引き続きブルジョワ的道楽を続けていました。
そしてそのうちに、親に自分の享楽に生きた生活を隠しきれなくなります。
当然ながら、厳格な両親は息子の趣味に反対し、芸術活動への夢を何とかあきらめるように諭します。
しかし、親に対して真っ向から立ち向かう気質ではなかったディオールにとって、親の期待に添えられないことが、どんどん大きな悩みになっていきました。
この時代、芸術というのは単なる娯楽で、絵画やファッションデザインは御用商人の仕事とされていました。
当時の扱いでは、芸術活動は二流の職業であったといえるでしょう。
ですから、この時代の良家の親が、子供がそのような仕事で生活の糧を得ることに反対するのは、ごく当然のことだったのです。
両親には、ほかにも悩みがありました。
長男のレイモンもまた前衛的思考の持ち主で、まっとうに自分のビジネスと向き合わず、ディオールの弟、三男のベルナールは精神が病み、精神病院に送られることになったのです。
こうした状況の中、ディオールは将来の仕事として親に妥協案を提示します。
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